海に漂うごみは、厄介者ではなく活用すべき資源に。「Eating Trash Island」のお話。
私たちエスオーシーの仕事は、水や環境の恵みに支えられています。だからこそ、海や川をめぐる新しい取り組みには、同じ「生活インフラを支える会社」として強い関心があります。今回は、総合建設会社・鴻池組さんが提案する「Eating Trash Island(イーティング・トラッシュ・アイランド)~海洋プラスチックゴミを食べる島~」というユニークなプロジェクトをご紹介します。
プラスチックごみを島が食べて成長していく?
「Eating Trash Island」は、海に流れ出たプラスチックごみを、島が“食べて”成長していくという発想で捉え直すコンセプトの名称です。海洋プラスチックごみは、生態系への悪影響や景観の悪化、漁業・観光へのダメージなど、世界的な課題になっているのは承知の通りです。鴻池組さんでは、このコンセプトを建築の設計競技や映像作品として発表し、海で集めたごみを回収・選別・再資源化する「島」の姿を通して、海洋ごみ問題をわかりやすく伝える取り組みを続けています。
このプロジェクトでは、ごみを単なる「厄介者」ではなく、「回収して活かすべき資源」として捉え直し、そのプロセスを視覚的な物語として表現しています。「プラスチックごみが海から無くならない限り、『Eating Trash Island』の成長は止まらない」というメッセージには、問題の深刻さと同時に、「行動すれば変えられる」という意志も込められています。
物語としてわかりやすく。仲間を増やす装置に
優れているのは、環境問題を「わかりやすい物語」に落とし込んでいる点です。数字や専門用語だけでは伝わりにくい海洋ごみ問題を、「島がごみを食べて大きくなる」というイメージで描くことで、子どもから大人まで、直感的に状況を理解できます。
さらに、技術とデザイン、社会的メッセージがきれいに結びついていることです。建設会社として培ってきた構造・インフラの知見に、環境配慮やアート的な表現を重ね合わせることで、「見ておしまい」ではない、議論と学びのきっかけを生み出しています。
なによりも「一社で完結しないプロジェクト」であることがすばらしいなと感じました。海洋プラスチックの削減には、行政や企業、市民、研究機関など、多様な主体の連携が不可欠です。ビジュアル性の高いコンセプトは、教育現場やイベント、企業の研修など、さまざまな場面に展開しやすく、「仲間を増やす装置」としても機能しやすいと感じます。
遠い話ではなく、私たちのテーマとして考える
海洋プラスチックごみについては、G20大阪サミットで「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする」という「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されるなど、国際的な目標も掲げられています。その実現には、技術開発やルールづくりだけでなく、人々の意識と行動の変化が欠かせません。「Eating Trash Island」のような取り組みは、その入口をやさしく、しかし力強くひらいてくれる存在だと言えるでしょう。
リネンサプライやクリーニング事業を営む私たちエスオーシーにとっても、プラスチックとの付き合い方は他人事ではありません。包装材の削減やリユースの工夫、物流の効率化など、日々の業務の中でできることを一つずつ見直していくことが、海の未来につながっていきます。
遠い海の話のようでいて、実は私たちの暮らしのすぐ足もとにつながっている海洋プラスチック問題。今回ご紹介した「Eating Trash Island」をきっかけに、身の回りのごみの行き先や、次の世代に渡したい環境について、一緒に考える時間を増やしていければと思います。